蜂毒アナフィラキシー3

このような事情でワシは蜂毒に対してかなり敏感になっているので、スクラップブックには蜂退治の方法がいくつか残っている。蜂退治の方法を幾つか紹介しよう。

1.掃除機で吸い込む方法

薄暗い時間帯に巣の近く、電気掃除機の先端を外したパイプの吸い込み口に、チョウチンアンコウのように豆電球を灯し、明かりに寄ってくる習性を利用して、吸い込んでしまう方法。
電源が必要だが、吸い込みパイプをつないで延長すれば、巣から離れて遠くからセットできるし、吸い取った蜂は吸い込み口から殺虫剤を投入すれば簡単安全に退治することが出来る。実践したことはない。

2.ペットボトルで罠を作る方法

貯金箱かポストのように、ペットボトルの上部に2センチ四方くらいの穴を開け、蜂蜜・焼酎・ジュースなどの混合物の蜜を入れたトラップを作り、蜂が多い屋外に何本もぶら下げておく。トラップに侵入した蜂は外に出られなくなり溺れてしまう。

これは一度、スズメバチが飛び回って危険だという現場に呼ばれて、試したことがある。
出来るだけ美味しい蜜を作るために、現場で蜂蜜・オレンジジュース・黒砂糖・焼酎・酢を鍋で煮て、ペットボトル5~6本に詰めて木の枝にぶら下げた。
これは焼酎と酢の効果絶大で、作った傍から匂いというか臭気を発するが、更に2~3日で発酵が進み、強力な匂いを周辺に撒き散らし始める。
一週間ほどして見に行くと、獲物が結構入っている。蜂はもちろんのこと、蛾・カナブン・カメムシなどで、蜜風呂は満員になっていた。

3、漂白剤をスプレーに入れて蜂に吹きかける方法

最近聞いた話だが、これで翅が溶けて飛べなくなるというのだ。
漂白剤の主成分は次亜塩素酸ナトリウムなどで、いわゆる塩素らしいが、この強アルカリで翅を構成する蛋白質が溶ける、という理屈なのだろうか。これなら園芸用の噴霧器などを使用して、惜しげもなく大量に使用することが出来る。
もちろん市販の殺虫剤でも、小型の蜂はおもしろいようにポタポタと落ちてくれるし、最近は8m近くも飛ぶ、ハチ専用強力形の殺虫剤が数種類市販されているので、話は早い。

しかし、ことスズメバチに対してはどうも自信が無い。ハチ専用殺虫剤にも、対スズメバチとは記載されていない。
かような大型のハチに薬効が回るのは時間がかかるだろうし、薬が効く前に刺されてはたまらない。

◆林業などで使用する「ハチノック」という強力殺虫剤もあると聞く。これは薬効大きいらしいが、試したことは無い。
ワシは軒先のアシナガバチなどは、細く長いパイプを用いて、遠くから殺虫剤を吹きかける。
パイプの手元から殺虫剤を吹き込んで、反対側で巣に吹きかけるようにしている。
薬液の一部は手元にこぼれ落ちるが、出口からも煙突のようにモクモクと出てくれるので、巣から離れて安全に退治することが出来る。手ごろなパイプが無い場合、釣りで魚をすくう時の「タモ網の柄」の底栓を抜いて代用したことがある。

蜂除けの心得

着衣の色:山歩きで山林に入ったりもするが、夏秋はやはりハチが怖い。黒い服をさけ、出来るだけ白っぽい服装で歩く。
蜂は黒い色に敏感で、何かと攻撃してくる色なのだ。
ミツバチが蜜を狙う熊を天敵とみなす様に、ハチの類は黒い毛や黒い色を攻撃対象にすると聞く。

やはり頭部や眉毛は刺されやすい部位とされているし、黒目を刺されて失明などもあるらしい。恐ろしいことだ。

蜂の行動:山道などでスズメバチに、突然体の周りをブンブンと付きまとわれることがある。これは門番の警戒ハチであることが多く、数十メートル以内に蜂の巣があると考えて良い。

ハチは近づく動物に警戒と観察を行い、相手を敵とみなすと、合図を出して仲間に連絡し、数十匹の攻撃ハチが巣から出てきて、攻撃されることになる。

特に夏から秋にかけてが、子育ての関係から獰猛になると言われている。
9月になると毎年のように、郊外の行楽客がスズメハチの大群に襲われて怪我をするニュースに触れる。

蜂が現れたら

もしもハチに付きまとわれた場合は、静かに立ち止まり、ゆっくりとしゃがみ込んで去るのを待つとか、あるいは前進を諦めて静かに後戻りするのが、賢い行動だ。
間違っても手で横に払ったり、走って逃げてはいけない。これは非常に危険だ。

それにきつい香水を付けたりして、ハチを呼び寄せないことも重要だ。
野外で缶ジュースを飲む時なども、飲み残しの缶には、紙などを丸めて栓をすることだ。
ハチがジュースを求めて缶内に入り、知らずに飲んで喉を刺されて死亡した例もある。これも実に恐ろしい刺され方だ。

万が一、蜂に刺されたら

では運悪く刺された場合の、特にアナフィラキシー保有者の有効な対処というのはなんだろうか。

まずはいち早く何らかの方法で毒の吸引をおこない、注入毒を少しでも除去することだ。
これにはアウトドアーショップなどで「ポイズンリムーバー」などの注射器型の吸引器を求めることが出来る。

そしてアナフィラキシーに特に効果的なのが、近年日本でも認可された、自己注射用エピネフリン注射薬「エピペン」だ。
常時、車中やリュックに携帯し、事あれば数分以内に、ちょうど糖尿病インシュリンのように、自分で注射する。
太腿などにブスッと自分で押し当てると、バネの力で自然に注射液が注入される。

林業関係者は山中でハチに刺されることが多く、年間20名ほども死亡者を出すことがあることから、森林組合などでは伐採作業に際して、携行するところも多い。
近頃は厚生省から、ハチ毒だけでなく重度の食物アレルギーにも使用が認可され、非常用に出回り始めた。

しかし「エピペン」は簡単に薬局で買うことは出来ない。
対象者がアナフラキシーであるという医者の処方箋が必要だし、保険未承認で一本1万5千円という高値だ。

さらに消費期限は一年位と短いことから、お手軽に配置とはいかないようだが、アナフィラキシー保有者はそうも言っていられないので、購入を考えよう。

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