自転車教室参加レポート1

自転車に乗れない人の味方です

私は、じつは…ヨワイ○十年を超えるこのトシまで、まったく自転車というものに乗ったことがない…というよりも、なかった。つい先日まで。

このサイトの主役である、弟ののぶちんが超アウトドア野郎で、トライアスロンにも参加していることを考えると、えらい違いだが、もともと子供の頃からだいぶタイプが違うので、それはそれで仲良くやっている。

こんな話をすると、「えーっ、自転車に乗れない人なんているのぉ~?うっそー、ほんとぉー?どうして……???」という反応が返って来ることが多い。
次に「なんだか、らしくないねえ。意外だなー。ほんとに乗れないのぉー?」と続く。なぜ乗れないかというと、他の自転車に乗れない人の理由と、ほぼ似通っていると思う。

  • 子供の頃に家の中で本ばっかり読んでいたので、外で自転車に跨るなんて考えもしなかった。
  • 家が車や坂の多い場所にあり、危なくて自転車の練習をしたり乗る環境が無かった。
  • 家が貧乏で、子供用の自転車を買ってもらえなかった。大人用には乗れないので、そのまま乗らないまま。

以上のような理由で子供の頃に乗りそこない、そのまま大人になってしまって、ずっと街中で暮らしている為、今更練習する機会もない。 etc,etc…だが、これ、ほぼぜんぶあてはまってしまう。 弟たちは牛乳配達なんかしていたので、近所の空き地で自転車の練習していたのは知っている。だから一度またがったら次の瞬間から易々とのりこなせる訳ではなく、少々練習が必要だぐらいは知っている。

弟達が練習していた時、「お前も乗る?」といちおう言われたが、「乗らな~い」とそのまま本を読んでいたので、それっきり。
他の乗れない人達も、だいたい似たようなものだろう。

そのまま成長するにつれ、家の前は車の往来が激しくなってバス通りになり、練習する空き地も消えてしまった。もうこの段階になると、自転車の事など忘れ去られて、練習の話が蒸し交わされる機会もないまま…。

口に出さない気がかり

自転車
しかし、乗れない人なら分かると思うが、ある時点からなんとなく、自転車に乗れないことが意識下でずっしりと重石のように感じられて来る。どうも世間では、自転車に乗れない人なんていないらしい。
今更乗れないなんて、とっても言い出し難い…。失敗したなあー、子供の頃に乗っときゃよかった。でもあの頃は、とてもそんな感じじゃなかったしなあ……。
ずーっと繁華街にばっかり住んでいるので、これまで格別に不便も感じなかったし、今現在でも特に必要性も感じないのだが、一回だけ苦い思い出がある。

中学生の時、可愛がってもらっていた体育の先生がいて、私は唯一、女の子で剣道をやっていた為、格好のカラカイ相手にされていた。
その先生からある日の放課後「お使い行って来て」と言われた。「そこに自転車あるから乗って行ってよ」と言われたが、剣道・空手の好きな女の子が自転車乗れないってのも、なんだかとっても言い出し難い感じがして、モジモジしていた。
その時は相手の先生が勝手に何か推測したのか、何事もなく終わったが、やっぱり嫌なもんである。

最近は考えるところがあって、何かの序でに意識的に「私、自転車乗れないの」と時々言う。そうすると、意外や意外、ボロボロと出てくるのである。「私も乗れないの…」
普通に乗っている人にはたぶん、自転車に乗れない人がどれくらい存在するか、あんまり分からないのではないだろうか。

ざっと思い出しただけでも、今のところ身近で女性ばかり6人知っている。どういうわけか全部が全部、武道とか水泳とか、身体を使う習い事の場所で、同類を発見している。
武道なんて女性の絶対数が少ないことを考えると、これは意外な数ではないか?それと、みんな住まいが街中という理由も大きいだろう。

このママでいいのか?!

このまま乗れないまんまで、オバアさんになってしまい一生を終えても、別にどうっちゅうこともないのだろうが、先年カナヅチを卒業した序でに、この…なんだか心の隅っこにひっかかっているヘンなカタマリを、解消してしまおうか、という気になり始めた。

泳げない人は平気で「私、カナヅチなの」と言うが、自転車に乗れないというと、なんだか非人間みたいである…
そこで、この問題をどうやって解決するか?…と考えたのだが、これが難問だった。
うちの近所で練習しやすそうな場所はないし、第一、いいトシこいたオバさんが、道端でよちよち自転車の練習してたら、近所の評判になりそう。そこまで心臓強くないし、それにこのトシで一人で練習して、すぐ乗れるようになるかしらん……。

その時ふと、前に町内会の回覧板か何かで「自転車教室」というのを見かけたことを思い出した。そうだ、ネットで検索したら、市の広報かなんかが、出て来るかもしれない。。。

女性のための自転車教室

というわけで検索を始めたら、出てきました!
そのものズバリ「女性のための自転車教室」
子供の為の教室は多いが、成人対象なのは、このサイクルスポーツセンターのものだけみたいだ。(2004年時点)
これは静岡県修善寺で一泊二日の合宿形式。「30年の歴史と4,000名の卒業生、99.9%の習得率」とあり、おお、なかなか良さそうではないですか。

修善寺ならば、新幹線乗ればアッという間だし、温泉入りがてら自転車チャレンジ合宿なんて趣向もたまにはいいな。持つべきはパソコンですねー。(乗れればパソコン関係なく、自転車を持ってる筈なんだけど)

しかし、やっぱりけっこう乗れない人がいて、需要があるんですねぇ。すぐに定員が満杯ではないですか。おまけにおまけに、参加資格・年齢55歳まで?!あぶない…早くしなくっちゃあ。
というわけで、すぐに電話して「まだ○月のぶん、大丈夫ですか?」と聞いたら、担当のさっぱりした感じのいい青年が出て、いろいろと親切に教えてくれた。

かくなる上はこの発見を、他の乗れない組にも伝えようと、いろいろ電話したりメールしたりするが、「今月は都合がつかない」「猫がいるから家を空けれない」「うーん、考えてみる…」などなど…。
なんだぁ、みんなダラシがないなあ。そんなことだから乗れんのじゃ、と自分のことを棚に上げて、一人でウキウキしながら準備を整える。

しかし荷物が多いよ。参加要項によると、服装は裾の細くなったジャージなど。ジーンズは不向き。雨天の場合でも屋外で練習しますので、雨具の用意を…?
お天気が良ければ帽子が必要。できれば膝当て、肘当てなども???
なんだよ、普段から受身取ってる私はそんなもん使いませんよ。

いざ出発

当日、朝10時40分集合で、時間的にはゆっくりだったので、ちゃんと朝ご飯を食べてから新幹線に乗り、三島から伊豆箱根鉄道に乗り換える。

当初、ローカル線だし本数も少ないから、現地に近づくに連れてたぶん、教室の参加者がだんだんと集結してくるのが分かるだろう、という予測をしていたのだが、それが余りにもバッチリ当たり始めた。

伊豆箱根鉄道ですでに、大きなボストン+ポシェットなどを携えた女性が三々五々…。地元の住人とは明らかに様子が違う。
共通しているのは、みなどこか、緊張した面持ちで、一緒に電車に乗り込む女性を、チラチラ観察している。私も当然、同じことをしているのだが。

この傾向は、サイクルスポーツセンター行きのバス停で、完全にはっきりした。
教室の一回の定員は20名である。中には車で来る人もいるだろうから、十数人の集合の筈。バス停のベンチに座ってる人を数えてみると、13人ばかりだ。

ほとんどが若い女性で、オバさんは私ともう一人だけだ。
この人たちも、頭数を数えては同じこと考えてるんだろうなあ…と思うと、なんだかすっごく可笑しくなってくる。
チラチラと観察していると、「私、スカートしかはかないの」という服装感覚の人が多い。なるほど…。

私は荷物が大きくなってしまったので、そのまんまでも練習できそうな、スパッツの軽装である。
バスで20分ばかりの道のりだが、えらい山の中に連れて行かれるもんだ。

辺りの景色を見ながら、(ずいぶん遠くまで来ちゃったなあ…。これって、たかが自転車に乗れない為にこんなとこまで来たの?私っていったいナニ?)という、妙なバカバカしさが急激にこみ上げてくる。
いかんいかん、魔に取り憑かれたか…と迷いを振り捨てているうちに、センターの前に到着した。

ここまで来ちゃったら、もうマナ板の上の鯉。行くとこまで行って乗るしかないよね…。
そのバスに乗っていた例外は、競輪学校の関係者らしい、折り畳み自転車を積んだ3人組みのジャージ姿の女の子だけだった。
その3人以外、結局は全員が、この教室の参加者だった。う~ん…ある意味、異様な光景ではある。なんだか隔離病棟みたいだ。

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